※後援会報 第45号(2013.1/25) 転載記事
鈴木 麻友(飯島充男ゼミ生)
私たち飯島ゼミ16人は、2012年9月20日、21日にかけて果実の生産が盛んな福島市飯坂町東湯野地区で、果樹農業の現状をとおして原発による被害状況を調査してきました。調査にご協力いただいた16軒の農家の方々、福島市内全域の若手果樹農家で作るふくしま土壌クラブ会員の橘内義知さんご一家、JA新ふくしまの紺野茂美さんのご協力の下、資料だけでは分からない現実をこの目でとらえることが出来ました。
私はこれまでテレビや新聞を通してしか見識がなかった、酪農のお話を伺ってきました。お話を伺った鈴木さんが購入されている輸入飼料ですが、原発事故当時は輸入出来なくなったため、飼料を満足に牛に与えることが出来なかったとおっしゃっていました。人間なら一年前に食事制限をしたとしても、現時点でバランス良く食べていれば何の問題もないと思いますが、牛には大きなダメージがかかるようで、当時牛たちにかけてしまった負担は、商品の牛乳の品質に反映されてしまうそうです。畑や田んぼと同じで、与えてしまったダメージから回復させるには何倍もの手間と時間がかかるのだと思います。
安全性に対して鈴木さんは、福島産の牛乳は放射性物質の検査をきちんと行っているため、安全なものを提供できている自信があると胸を張っておっしゃっていました。「検査を受けて合格することで自分の生産したものが安全だと自信を持って言える」と他の農家の方もおっしゃっているように、検査は私たち消費者の為だけでなく、生産者の方の為でもあるのだと思うようになりました。
それぞれの農家で原発事故に由来する経営方針や原発災害の実態、賠償金問題、地域振興への意見などを伺ってきました。農家によって結果は変わっており、規模拡大や土地の改良に意欲的な方もいれば、そうでもない方、賠償金に満足している方もいれば、そうでもない方もいらっしゃって、一概に東湯野地区の総意とは言えないことも判りました。
ヒアリングから共通して確認できた点は、原発事故が福島の人・土地・動物に与えた影響はとても大きいはずなのに、農家の方々は放射能の影響を受けてもなお前向きに取り組んでいるところです。他のゼミ生からも、調査前は農家の方は原発の影響や将来への不安から悲壮感を抱いていると考えていたが、実際にお話を聞いてみると予想とは真逆で、農家が今後の経営計画を生き生きとしながら話してくださったことや、とても前向きに農業を営む姿勢に正直驚いた、との声が多く挙がっていました。
今回の調査では、農家の方が前向きに考え、元気だったと知ることが出来たと同時に、農家を支えるために行政や農協の迅速かつ正確な対応がいかに重要かを認識した貴重な体験でした。