※後援会報 第48号(2014.8/1発行) 転載記事
近年の就職状況について推移を見てみると特徴的なことが浮かび上がってくる。その一つが、地元への就職が増えていることである。
下の表は経済経営学類の平成20年度卒業生、そして大震災の翌年4月に就職した23年度卒業生、最近年である25年度卒業生について推移を見たものである。
表の右の欄の「20年度からの増減」は25年度について20年度からどのように変化したかを見たものであるが、東北にある企業・官庁等への就職が男女合計で36%も増加している。特に、著しい増加を示しているのが福島県内への就職である。20年度に比較すると男女合計で91%の伸びであるから2倍近くになったことを示している。その分、東京及び首都圏が男女合計で37%減少している。大阪・関西も同様に減少している。
東北地域への就職で、受け皿となっているのがどこかを調べると、次の表を見ると一目瞭然である。地方公務員である。25年度卒業生を20年度と比較すると、地方公務員が76%増となっている。女子の場合は倍増である。国家公務員は横ばいであるところに地方公務員が大きく伸びている。
卸・小売業とサービス業も増加
さらに調べてみると、他にも受け皿のあることがわかってきた。卸・小売業とサービス業(この場合のサービス業は金融・保険・建設を除いている)である。20年度卒業生で福島県の卸・小売業に就職した男子は13名、女子は5名であったが、25年度にはそれぞれ19名、21名に増加しており、特に女子の伸びが大きい。また、20年度卒業生で福島県のサービス業に就職した男子は2名、女子は3名と、非常に少なかったが、25年度にはそれぞれ11名、8名と、大きく増加している。
「福島県以外の東北」の卸・小売業とサービス業についても同様に比較したが大きな変化は見られなかった。福島県のサービス業と卸・小売業が顕著な増加を示していることになる。
地元志向は全国的な傾向
実は、自分の育ったところで就職するという地元志向は全国的な傾向である。第一生命の調査によると、大学生に対して、「就職をするにあたって、今住んでいる地域から移動をすることを考えているか」と質問したところ、「今住んでいる地域で働くつもり」と回答した学生の割合が46.7%であった(2013年5月27日付け NEWS RELEASE)、多くの学生が現在の住まいから地域移動を伴う就職を考えていないという特徴が見受けられる。また、この調査では、地元で就職する理由を、「地元が好きだから」や「地元に貢献したいから」等の回答割合が高いとしている。しかも、同調査によると、企業の規模は関係ないと考える学生が増加しており、また、中小企業庁は発表資料の中で、大学卒業予定者の「中小企業への就職希望者数は徐々に増加している」と指摘している。
こうした学生の地元志向に対して、地域企業に関する情報は決して多くなく、今後就職支援をする部門としては、その情報を充実させることと、地元企業との交流機会を設けることが重要と認識している。その一環として、昨年度から、福島県中小企業団体中央会と連携して、地元の企業見学会を実施している。これはバスをチャーターして30名から40名の学生を企業に連れて行き、経営者による話を聞き、施設の見学をするものである。 インターンシップを受ける学生も増加しており、インターンシップ先として地元の登録企業も増やしつつある。
(写真は、福島市に本社のある流通企業の株式会社いちいで、本学卒業生の伊藤大地営業本部長から話を聞く学生たち)
地元の卸・小売業とサービス産業への就職が増えているということは先述したとおりであるが、製造業への就職は減少しており、東北でナンバーワンの工業出荷額を誇る福島県の地域経済の牽引役でもある地元製造業への関心を高めることも重要な課題と考えている。
(経済経営学類就職委員・教授 西川 和明)