2013年5月17日金曜日

新入生のみなさんへ:学類長からのメッセージ 大学4年間で成長し、実力を身につけるために

※同窓会報『信陵』No.83 入学特集(2013.4/25発行)転載記事

真田 哲也(経済経営学類長)

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。
高校時代に大震災と原発事故を体験したみなさんは、いろいろなことを感じ考えてきたことと思います。そのことを大切にしながら大学での勉強に取り組んでほしいと思います。被災という負の体験を大学で勉強する目的や将来の仕事について、改めて深く考え直す機会に転ずることができればそれも積極的な意味をもつことになります。

福島大学は震災後2回の入学試験を経てきましたが、2年連続して大学入試の志願者が増加しました。また一昨年度入試では県内の志願者比率が急増したのですが、この冬の入試では再び県外の志願者が増加して震災前の状態に戻ってきています。原発事故などの影響を克服しつつあるかと思われます。

<内面的基礎力の不足を感じている企業>

経済産業省は大学生に向けて「社会人基礎力」という三つの力を求めました。「考え抜く」、「主体的に実践する」、「目標にむけてチームで取り組む」。ところが最近の調査でこの基礎力の理解について企業と学生のあいだにギャップがあることが明らかになってきました。学生はそれらの能力要素への意識は低く、「自分は既に身につけている」と考える傾向が見られ、むしろ関心は語学や簿記などのスキル系の能力獲得に置かれているようです。それに対して、企業側は「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション力」といった内面的な基本能力の不足を感じている(平成21年6月、経産省調査、HP参照)、とのことです。

<原動力としての知的欲求>

このような内面的な実力を獲得する原動力となるのはやはり「・・とはなんだろう」という知ること考えることへの欲求です。それがなければ粘り強さもでてきません。自分なりの問題意識があることで行動でき、友達と議論することもできますし、目標に向かってチームを組むこともできます。他人から言われて強制的にやるものでは実力はつきません。成長の起動力となるのが「・・について知りたい」「・・・とはなんだろう」などの知的欲求です。

 <大学卒業ゴール=卒業論文>

上記のような内面的能力を身につけるために作られたのが経済経営学類のカリキュラムです。第一セメスターから順次より上級の科目へステップアップし実力をつけていくようになっています。そしてそのカリキュラムの最終目標となるのが、「卒業論文」の作成です。今年度から、経済学・経営学の各分野の基礎についてより着実な理解を進めるためカリキュラムを一部変更しました。しかし、勉強のゴールが「卒業論文」にあるということについては変わりません。このゴールとなる科目=「卒業論文」は卒業生から特に評価が高いものです。23年度卒業生246人のアンケート回答中「大変良かった」36%、「まあまあ良かった」44%という結果にみられるように、8割の卒業生がこれを評価しています。

<自分のテーマをみつける>

大学での勉強は高校までの勉強とは異なり「自分で問題を発見しそれを探求していく」という点に特質があります。そしてその集大成といえるものが卒論です。自分の「知りたいテーマ」「考えてみたいテーマ」は何か。それを発見していくために講義を利用してください。様々な授業科目のなかに<自分のテーマ>を見いだすヒントがあるはずです。自分のテーマが見出されるなら、そこから本当の大学生活が始まります。選んだテーマについて自由に追究してください。そしてその過程でいつの間にか実力も養われるはずです。成長しようと思って成長するのではなく、興味あるテーマを探求していくうちに実力がついて来る、そういう不思議な特徴をもつのが卒業論文の勉強です。

大学生活のゴール=「卒業論文」に到達するためには、まずその前になんらかのテーマと出会うことがどうしても必要です。大学生活の基本線はこの「出会い」にあります。この出会いを求めて新生活をスタートしてほしいと思います。