2017年6月30日金曜日

「福島大学経済経営学類の伝統を未来に」(経済経営学類長 阿部 高樹)

※福島大学経済経営学類後援会会報  第54号(2017年7月28日発行) 転載記事

経済経営学類長 阿部 高樹

 福島大学経済経営学類は、1921年12月に創立され翌年4月に開校した福島高等商業学校(福島高商)であり、本年で95周年、2022年には100周年を迎えます。これまで約24,000人にも達する卒業生を輩出してきた、歴史と伝統のある学類です。本年の10月28日には、創立95周年記念大会が開催されます。

 しかしながら、近年、在学生がその歴史と伝統を意識する機会が少なくなってしまったような気がしています。例えば、1981年に現在の金谷川に移転する前、「経済学部」がどこにあったのかを知らない学生が増えてきました。本年2月のゼミ卒業合宿の帰り、私は数名の学生を連れて、信夫山の麓の森合地区、現在の県立美術館や県立図書館の敷地を歩き、一世紀近く続く本学類の歴史に思いを巡らしました。敷地の東端には、「福大経済学部此処に在りき」という碑が建っています。

 このように歴史ある本学類は、発足当時は全国から受験生があつまる全国区の教育機関でありました。現在でも、福島大学の4学類の中で一番県外比率が高くなっています(平成29年度入学者で本学類の県外比率は66.2%。人間発達文化学類は49.3%、行政政策学類は60.8%、共生システム理工学類は55.7%)。地域に存在感ある学類を目指しつつも、多様な地域からの学生が、ともに切磋琢磨しつつ学びあうことから得られる人材育成面の効果は、とても大きいものであると認識しています。

 さて、現在福島大学では、平成31年度からの食農学類(仮称)の設置を伴う全学再編と教育改革を進行中です。本学類でも、新しいカリキュラムの検討をすすめていますが、全くの新しい教育プログラムを開始するというよりは、近年継続的に立ち上げてきた教育内容の総仕上げといったものになります。経済学士として必要な基礎基本(経済経営リテラシー科目)の学びをさらに強化するとともに、小集団による実践的教育を展開し、主体的探求力を高めていきます。「地域と世界から学ぶグローカル実践教育」として、現在進行中のグローバル人材育成プロジェクトの展開や、今年度試行的に開始したコーオプ教育(企業等との共同教育プログラム)の拡大をより効率的な運営のもとで実現できるように検討中です。また、会計エキスパート養成プログラムに続くエキスパートプログラムの設定(データ分析など)や、公務員志望が一定割合いることを考慮した政策系のコース導入なども議論しているところです。

 以上のように一世紀近くの伝統ある経済経営学類も、時代の要請に応じて絶えざる改革を推進してきました。後援会の皆様の忌憚のないご意見も参考にして、今後もよりよい教育体制の構築に努めて参ります。(平成29年5月30日寄稿)