2013年5月10日金曜日

専門演習紹介:西川和明ゼミ・”スーパーチェーン”株式会社いちいを訪問

※後援会報 第45号(2013.1/25発行)転載記事

増川 大輔(西川和明ゼミ生)

9月13日、福島大学経済経営学類西川ゼミはスーパーチェーン・株式会社いちいさんの本社を訪問して伊藤信弘社長にお会いし、その後、放射能測定室と店舗を見学させていただきました。

今回の訪問目的は、昨年3月の原子力発電所事故の影響で福島県産農産物が風評被害にさらされて来ている中で、いちいさんは一早く農産物の放射線検査を実施し、その値を店頭とホームページで公表するなど正確な情報を消費者に提供することで政府の基準に合致した安全な農産物を販売していることをアピールする対策を展開して来ており、そのことを社長にお聞きするためです。この訪問には福島県中小企業団体中央会さんがご協力くださいました。

同社は地域密着型のスーパーとして、福島県の中通り、特に福島市を中心に14店舗を展開しています。今後は県南地方にも展開していく予定だということです。明治25年、海産物商として創業しました。今ではスーパーマーケット事業だけでなくペット事業(ペッツマム)モスバーガーのフランチャイズ店も出しています。

福島県産品の放射能測定を県内でいち早く実施したのがいちいさんですが、当初は情報が不足しており測定器選び、実施する場所、検査方法など独自に調べながらの挑戦でした。また、他の企業がまだ実施していない中で先駆けて実施することに、社内でもかなりもめたとのことです。しかし、消費者の安心・安全のために実施することに踏み切りました。

測定器は当初何を選んで良いのかが分からず、社長の知り合いの方のつながりで鉛の厚さが5cmもある良いものを選ぶことが出来たとのことです(FNF401)。鉛が厚く、空間線量が低いほど正確な測定値取ることが出来るそうです。

検査場所についても外界の影響のなるべく小さいところということで窓のない台車洗浄室を改造して設置しました。方法についても、販売4日前に測定しその値の農産物を農家自らが販売するかどうかを決めることにし測定を開始しました。公表後は震災前に比べて売り上げが回復、上昇し、最初は公表を渋っていた農家の方々も同意してくれるようになりました。この測定結果はホームページ上だけでなく店舗にも冊子を置いており実際に手に取ってみることが出来ます。

また契約農家の方々との間では、基礎GAPと基礎カルテといって、土壌管理、実際の栽培と収穫・出荷のプロセスについて放射線対策も盛り込んで標準化した作業マニュアルづくりも進めてきました。これには福島大学も協力しています。基礎カルテは農業者の安全を確保することや消費者に安心を与えることが出来ます。また、ほ場、水、たい肥、土壌、収穫野菜、の放射能を測定し、それをシートに記入することで放射能の 推移も見ることが可能となります。信頼回復のためにはこのようなチェックを継続して行うこと、そして公表することが重要であるというポリシーのもとで進められています。「数値の変動も見られるので将来に繋がる」、「自信を持って商品を販売できる」、と農家の方々も前向きだそうです。

基礎GAPはより良い農業の実践・慣習のことです。まず、ほ場点検シートを使って準備、農薬管理、堆肥管理、衛生管理、放射性物質対策、作業者の安全、記録を作付け前に行います。次に品目別チェックします。準備、残留農薬防止、病原微生物汚染防止、異物混入防止、放射性物質対策、記録を出荷前に行います。これら二つのチェックを行い消費者である私たちに安心と安全を提供しています。

海産品の測定については漁獲された海域を明示して公表しています。これは水揚げ場所が北海道、青森などとなっていても漁獲海域が異なることがあるからです。太平洋側を6つの海域に分けて表記しています。

放射線測定機で測定するには、サンプルを細かくして容器に隙間なく入れなければなりません。フードプロセッサーを用いて固形物を砕くことがあるそうですが、昨年7月以来なので3代目のプロセッサーを使っていました。実際に見てみるとかなり手間のかかる作業であることが分かりました。

消費者である私たちの安全のために努力されていることが今回の訪問で深く感じることが出来ました。今現在では同社での福島県産品の売り上げは震災前よりも伸びており、県外からも励ましのメールが届いたり、わざわざ福島県産を買う方もいるとのことです。私たちも安全であればなるだけ県内産の食材を買うように心がけています。

会社を離れるとき、伊藤社長は温かい笑顔で送ってくださいました。ありがとうございました。