2011年3月の原発事故以降、福島県の中通りおよび浜通りの多くの地域で、子どもたちの外遊びがままならなくなっています。事故当初より改善されたとはいえ、2年経った今でも、子どもたちの生活環境の少なからぬ地点において、平時の国際基準よりも高い放射線量※が観測されています。事故前と同様に安心して遊ぶことのできない子どもたちが、まだまだ沢山いるのです。
そこで当研究室では、マーケティングの手法を応用して社会問題の解決を目指す「ソーシャル・マーケティング」の観点から、同じ福島県内ながら空間線量が事故前とほとんど変わらず(2013年7月の平均0.09µSv/h)自然豊かな南会津町旧伊南村でのキャンプに、福島県在住の子どもたち(小学校高学年)を招待する活動に取り組んでいます。この活動にあたっては、様々な団体からのご支援をいただいております。最初の活動は2012年に行い、今年で2年目となります。
キャンプでは、自然体験活動の専門指導を行っている野外学校FOSのスタッフにサポートしていただきながら、伊南川での川遊びや尾瀬でのハイキング、お菓子作り、お絵かき、カードゲーム、ドッチビー、ハンモックなど、様々な活動を子どもたちといっしょに行いました。子どもたちはみなゼミ生に懐いてくれ、はじけるような笑顔を見せてくれました。また、南会津町旧伊南村のみなさんや郡山市の救急救命士といった地域の方々との交流も深まり、ゼミ生自身、大変充実した時間を過ごすことができました。
なお、コドモイナGOは、コールマンジャパン株式会社のCSR活動「東日本大震災復興支援 未来を照らそうプロジェクト」の一環として、活動資金やキャンプ用品を支援していただいております。
コドモイナGOに関する詳細は、コドモイナGOのFacebookページをご覧ください。
共催団体
・いな夢クラブ(南会津町旧伊南村のボランティア団体)
・福島大学 経済経営学類 遠藤明子研究室(専門演習)
協力団体
・コールマンジャパン株式会社(総合アウトドア用品企業)
・野外学校FOS(自然体験活動の専門指導)
・南会津町(地方自治体)
・地元各種団体(チーム浜野、オオクワファーム、いな郷土料理研究会、南会津町観光物産協会伊南支部)
・福島大学(経済経営学類、信陵同窓会)
提供:遠藤明子研究室 |
※註
日本政府は、ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告を基に、公衆の追加被ばく線量(自然被ばく線量および医療被ばくを除く)を、年間1ミリシーベルト(1mSv/y)以下と定めています。これは「社会的、経済的要因を考慮に入れながら、合理的に達成可能な限り、低く抑えるべき」とした放射線防護上の値であり、安全と危険の境界を意味するものではありません。
さらに環境省ではこれを踏まえて、国の除染実施計画策定地域の基準となる空間線量率を、毎時0.23マイクロシーベルト(0.23µSv/h)としています。年間1ミリシーベルトを単純に8765時間(24時間×365日)で除すと毎時0.11マイクロシーベルト(0.11µSv/h)となりますが、1日のうち、屋外に8時間、屋内(遮蔽効果0.4倍の木造家屋)に16時間滞在するという生活パターンを仮定すると、毎時0.19マイクロシーベルト(0.19µSv/h)となります。この値と、日本の平均的な自然放射線量である毎時0.04マイクロシーベルト(0.04µSv/h)の和が、毎時0.23マイクロシーベルト(0.23µSv/h)となります。
【計算式】1mSv(1,000µSv)≒{0.19µSv/h×8時間+(0.19µSv/h×0.4)×16時間}×365日
ただしこの値は、放射性物質が「面的」に存在し1年を同程度の空間放射線量の場所で過ごすことを想定した、除染判断基準です。局所的に限定された地点での汚染については、滞在時間が短いと想定されることから、必ずしもこの要件が適用されるわけではありません。