2013年9月3日火曜日

原発事故・震災に向き合って迎えた創立90周年 被災地の大学として新たな出発を目指す

※後援会報  46号(2013.8/2発行) 転載記事

真田 哲也(経済経営学類長)

経済経営学類の前身は経済学部ですが、さらにその前身となるのは、戦前の福島高等商業高校です。昨年その創立から90周年を迎えました。これまで2万人を超える卒業生を輩出し先人たちは戦前戦後の日本経済を牽引する重要な役割を果たして参りました。卒業生たちは福島・郡山・仙台だけでなく、東京を含めて全国に散らばっております。北海道から沖縄まで同窓会支部が存在し、昨秋行われた90周年記念の集いには全国津々浦々から千人近い同窓生が福島に集まり会場は熱気に包まれました。

残念なことに、この90周年記念の前年に震災・原発事故が起こり福島大学経済経営学類はこれまでにない困難に直面することになりました。放射能によるダメージをどのように克服していくかを問われる、非常に厳しい状況に置かれました。まず最初に2年間をかけて広大な大学の敷地を順次除染しました。その結果、放射線量はかなり低減し教育環境としてかなりの程度以前の状態に戻りつつあると考えます。(周辺の森林が0.8μ㏜/h前後でやや高い観測結果がでております。詳細はこちらの別刷りデータ 「keisoku.pdf」を参照してください。)

<被災地大学の2つの使命>

この原発事故に向き合う中で、福島大学経済経営学類は自らの存在意義について改めて再考する機会を得ることになりました。その2年間の模索のなかから現在新たな取り組みを進めています。その幾つかの取り組みについてここでお伝えしたいと思います。

被災地にある大学の使命は2つあると思います。第一の使命は当面の地域復興に教育・研究機関として貢献すること、第二の使命は教育・研究機関としての本来の機能を遂行し地域経済・日本経済に貢献する強靭な若者を育て長期的な観点から地域復興に貢献していくこと、です。この両方が大切だと考え、以下の取り組みを進めて来ました。

教育・研究機関としての本来の機能強化として、今年度より「会計エキスパートコース」「英語副専攻の拡充」「少人数教育の一層の強化」などのカリキュラム改革を行いました。その結果、「会計エキスパートコース」では簿記などの資格をもっている学生は入門科目の履修を飛ばしてより上級の科目の履修ができるようになりました。公認会計士協会や東北税理士会の専門家の方々による講義も導入されました。3年以上では大学院授業科目の履修も可能となります。また、大学院には「会計・税務プログラム」を導入し、「租税法」の専任教員が新たに赴任したほか、東北税理士会の専門家の方の講義も行われます。

英語副専攻」を履修した学生には「経済学士号」の他に「英語副専攻認定証」を発行します。この副専攻では英語による授業のほか、海外インターンシップなどで語学力を鍛えるための科目が配置されています。ネイティブ教員との緊密なコンタクトも可能です。

第一の使命である地域復興については今年度より「ふくしま未来食・農」プログラムが大学院経済学研究科に導入されました。これは放射能災害からの農業復興を主題としたもので文科省より支援を受けた世界的にも前例のないカリキュラムです。土壌学・農業経済・放射線などの各学問領域の専門家による講義からなり、福島の農業関係者や自治体関係者が受講しております。また、大学としては「環境放射能研究所」を今年度から大学内に設置することを決めました。これは広島大学・筑波大学など全国の大学と連携して環境に飛散した放射能の移動とその環境への影響を研究するための研究機関です。

このように福島大学経済経営学類は原発事故・震災に直面して困難を抱えながらも様々な取り組みを進めております。後援会の皆様のご理解とご支援をお願いするものであります。