則藤 孝志(特任准教授)
2013年9月に本学に着任いたしました則藤孝志と申します。大学院経済学研究科に新設された「ふくしま未来食・農教育プログラム」においてフードシステム論等の講義を担当いたします。この福島の地で農業経済やフードシステムの研究・教育を行うチャンスを与えてくださった本学の先生方にまず御礼申し上げるとともに、この場をお借りして、着任に際して一言ご挨拶を申し上げます。
私は生まれも育ちも和歌山県有田市であり、みかん畑に囲まれて育ちました。温州みかんのブランド産地として名高い有田ですが、市場価格の低迷や生産者の高齢化など産地をめぐる状況は厳しく変化してきました。このような産地の変化を目の当たりにしたことで、大学では農産物産地の存続・発展の方策を探る農業経済学や地理学の道を志すようになりました。
研究の専門領域は、上記の通り、農業経済学と地理学ですが、研究の視点・方法としてとくに重視しているのが、フードシステムという概念です。フードシステムとは、食料の生産から加工・流通を経て、最終消費に至るプロセスを一つのトータルなシステムとして捉えようとするものです。
福島県は米や果樹、野菜から酪農、畜産まで農業生産がとても盛んです。また食品製造業や卸売・小売業、外食・中食業、さらには農業資材産業など食と農にかかわる多様な産業が集まり、それぞれが取引を通じて連関することで地域に大きな付加価値をもたらしています。ここに、フードシステムの視点から地域経済を捉える重要性と必要性を見出すことができます。
悲しいことに、福島では震災と原発事故により、地域経済の支えであったフードシステムをめぐる地域内産業連関は大きく傷つきました。そしてそれは未だ十分に回復できていません。一方で、地域・集落ぐるみで、あるいは農商工が連携して、食と農のつながりを取り戻そうとする動きが生まれています。これらの動きをしっかりと捉え、福島におけるフードシステムの再生・発展に貢献できるよう、研究・教育に精進して参ります。
余談ですが、私は、映画「男はつらいよ」(通称、寅さん)の大ファンです。落ち込んだときや寂しいとき、寅さんに会うといつも元気をもらえます。
寅さんのような温かい心を持ちながら、ひろしさん(寅さんの妹さくらの夫、とても真面目)のような冷静な分析ができる研究者になれるよう頑張って参ります。皆さま、今後ともよろしくお願い申し上げます。