2013年5月30日木曜日

北村 清士(東邦銀行頭取)氏 記念講演会 「地方銀行経営」が行われました:5/29(水)

熊本 尚雄(准教授)

2013年5月29日(水)、東邦銀行提供講座・地域金融論において、「地方銀行経営」と題した北村清士・東邦銀行頭取による記念講演会が開催されました。

地域金融論は、東邦銀行創立70周年事業の一環として、平成23年度より開講されている授業で、東邦銀行の役職員の方々が、地方銀行経営や地域密着型金融など、幅広い分野について講義され、毎年、多くの学生が受講しています。

講演会では、地方銀行の概要、福島県の現状、東邦銀行の震災対応、経営方針・経営戦略など、実に多岐にわたるご講話を頂戴しました。通販事業、商談会等の開催、地方自治体との連携、成長産業・次世代経営者支援、文化・スポーツの振興、環境保全など、復興に向けた地域への様々な貢献事業内容のご紹介には、従来抱いていた金融機関に対するイメージとは違い、驚いている学生も数多くいました。

個人的には、2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けた東邦銀行の取り組みについては、驚くべきものが多々ありました。通帳・印鑑・カード等を喪失した顧客に対し、本人確認により預金払戻しを行う「緊急現金払戻し」を震災翌日の3月12日より実施、また、行方不明になった預金者家族の生活資金の確保のため、推定相続人であることを確認し、1人につき30万円までの払戻し特例を実施(わが国における過去の事例は10万円が上限。東邦銀行ではその後、取扱期間を延長し、払戻し請求金額の上限を60万円に増額)、さらには、原発事故に伴い、東邦銀行の本支店のない遠隔地に避難した顧客が増加し、避難先での預金払戻しニーズが発生したことを受け、2011年3月23日より、全国各地の39銀行からの全面的な協力の下、避難先の他の銀行の窓口で通帳・印鑑等を紛失していても東邦銀行の預金引き出しを可能とする「代理現金払戻し」という、これまでに前例のない取り組みをしてこられました。柔軟にして、血の通った諸々のご対応に感銘を受けたところです。

なお、こうした東邦銀行の地域金融の円滑化を図り、金融機能を維持するための様々な取り組みについては、平成24年3月に発表された『東日本大震災の総括』の中にもまとめられています。(http://www.tohobank.co.jp/common/html/shinsai_soukatsu.pdf) 

講演会の最後では、福島県のマーケットは震災以降、確実に変化しており、ここ数年で大きく変動・変化する可能性があること、そのため、大局的な視点で変化するマーケットの動きを読み取る必要があること、さらには震災によりハンディキャップを背負ったと考えるのではなく、大きなチャンスが必ず到来するという前向きな姿勢を持つことが肝要であることを力説されました。

全国的にも行員の人材育成に尽力され、先の大震災においても上記のような種々な取り組みを先頭に立って実践してこられた北村頭取の言葉だけに、実に説得力のあるものであり、100名を超す学生も終始、熱心に聞き入っていました。今後、学生が社会人として生きていく上での大きな示唆を頂いたものと思います。

写真:北村清士頭取(撮影:平野智久講師)